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活用事例

トラベルルール対応

送金に何を添えて送るべきか、情報が欠けたまま届いたときに何をすべきか、そして人が判断するのはどこか。規則の実務である送金単位の手順と、閾値が管轄ごとに異なる理由を扱います。

最終更新

コワーキングスペースで向き合って会話する2人の同僚

送金ごとの流れ

何が伝わり、欠けているとき誰が判断するか

送金元の事業者受取側の事業者
  1. 自動処理送金元の事業者収集送金側が、送金の時点で差出人と受取人の情報を記録します。
  2. 自動処理送金元の事業者確認差出人の詳細は、伝える前に確定させます。後から突き合わせるのではありません。
  3. 自動処理送金元の事業者スクリーニング送金の当事者双方を、制裁とPEPのデータに照らします。
  4. 自動処理データの受け渡し伝送データ一式は送金に添えて伝わり、受け取り側が読める形式で渡ります。
  5. 人の判断受取側の事業者判定受け取り側が届いた内容を評価します。不完全または不自然なデータは、自動で解消されるキューではなく、人の判断に回します。
  6. 人の判断受取側の事業者実行、拒否、返送、保留情報が欠けている場合の対応方針に基づいて判断し、その記録を残します。
2 人の判断4 自動処理
送金には二つの事業者が関わり、データ一式はその間を一度だけ行き来します。規則は通常、データの要件として説明されますが、運用の現場では判断の要件です。難しいのはデータを添えることではなく、データがないまま届いた送金を、受け取った事業者がどう扱うかです。

このページでは、トラベルルール対応を送金一件単位の手順として解説します。トラベルルールは、通常、データの要件として説明されます。差出人と受取人に関する一定の情報を、送金に添えて送らなければならない、というものです。この説明は正しいのですが、あまり役に立ちません。データを添えて伝える部分は、ソフトウェアが確実にこなせる仕事だからです。

運用上の難所は、その逆、受け取る側にあります。データが欠けていたり、不完全だったり、不自然だったりする状態で送金が届きます。規則は、そのとき何をするかを自社が前もって決めていることを求めます。

単一の閾値では設定できない理由

一つの数字に対して世界共通のルールを作ろうとする事業者は、この点でつまずきます。FATFの勧告そのものは誰も直接拘束せず、義務は各国の実施法から生じます。その法律は、金額でも時期でも異なるからです。

管轄閾値の扱い適用開始
米国31 CFR 1010.410(f)の下での3,000米ドル長年の前例
欧州連合(EU)暗号資産の送金に金額の閾値なし。1,000ユーロは、域外へ出る資金移動の縮小データセットと自己管理型アドレスの確認に関係2024年12月30日
英国2017年マネー・ローンダリング等規則第7A部の下で最低額なし2023年9月1日
シンガポール1,500シンガポールドルはデータセットの区切りであり、下限ではないMASの通知による
オーストラリア新制度。新規登録対象の暗号資産サービスは繰り延べ2026年3月31日、繰り延べ対象は2026年7月1日

したがって、単一の閾値を設定するやり方では、必ずどこかの管轄で合わなくなります。実務的に機能するのは、送金の経路ごとに規則のセットを用意し、適用範囲内で最も厳しい扱いになるよう設計する方法です。

規則が実際に問う判断

必要な情報が欠けたまま送金が届いたとき、取れる対応は実行、拒否、返送、追加情報を待っての保留の四つです。規則はそのいずれかを指定しません。文書化した方針を持ち、一貫して適用することを求めています。

上のワークフローで、判定と判断の段階に人の判断が必要と印が付いているのはこのためです。上流の工程はすべて自動化できます。ここだけはできません。この判断では、顧客への影響とコンプライアンス上の立場を比較します。そのどちらの側も、データフィードではなく自社の責任だからです。

自社顧客だけでなく双方の当事者

送金には必ず二つの側があり、取引相手は通常、自社が最も情報を持たない当事者です。自社の顧客だけをスクリーニングすると、見知らぬリスクを運ぶ送金の半分が、確認されないまま残ります。

同じことは相手側の事業者にも当てはまります。顧客データを交換するということは、相手がその情報を受け取り、保護できるという見立てを含みます。したがって取引相手の評価は、一度きりのオンボーディング工程ではなく、運用の中で継続して行う作業の一部になります。

監督当局が尋ねること

尋ねられるのは、方針を持っているか否かではありません。不完全な情報のまま特定の日に実行された特定の送金が、方針のとおりに処理されたかどうかです。

これに答えるには、判断とその根拠、その時期が、判断した時点で記録されていたことが必要です。後から取引ログで再構成しても、できるのは後づけの説明であって、証拠ではありません。

規則の由来と、その背景にあるFATFの勧告については、FATFトラベルルールガイド(英語)を参照してください。EUの制度の詳細については、資金移動規則(英語)を参照してください。スクリーニングの構成要素については、PEP・制裁スクリーニングと取引モニタリングを参照してください。

できること

差出人と受取人のデータ

送金に添えるべきデータ一式は、規則が定めるもので、取引相手の都合で決まるものではありません。公的な識別子などの項目は、取得できて、かつメッセージ形式の中に置き場所がある場合に限り、伝わります。

両側の制裁・PEPスクリーニング

送金には当事者が二つあり、その相手側こそ、自社が最も情報を持たない相手であるのが普通です。顧客だけをスクリーニングすると、送金の半分が未確認のまま残ります。

実際に適用される情報欠損時の方針

規則は、データが届かなかった場合に自社が何をするかを決めておくことを求めます。取り得る答えは実行、拒否、返送、保留の四つで、判断は案件ごとに場当たり的にではなく、文書化した方針の下で行う必要があります。

自己管理型アドレスへの対応

自己管理型アドレスの入出金には独自の扱いが必要で、適用される閾値を超える場合は所有の確認も含まれます。

取引相手へのデューデリジェンス

他の事業者と顧客情報を交換する前に、相手がその情報を受け取り、保護できると考える根拠が必要です。この評価は運用の一部であり、一度きりの前提条件ではありません。

判断を再構成できる記録

監督当局は、情報が不完全な送金をなぜ実行したのかを個別に尋ねます。答えるには、判断とその根拠と時期を、行った時点で記録している必要があります。

ハイライト

  • データは伝える前に確認し、後から突き合わせない
  • 自社の顧客だけでなく、送金の当事者双方をスクリーニングする
  • 情報が欠けた場合の方針を文書化し、案件ごとに判断せず一貫して適用する
  • 判断した時点で記録し、対象の送金に紐づける

FAQ

よくあるご質問

世界的に共通のトラベルルールの閾値はありますか。
ありません。あるものと前提して設定することが、よくあるミスです。米国は31 CFR 1010.410(f)の下で3,000米ドルを適用します。EUは暗号資産の送金について金額の閾値を完全に撤廃しましたが、1,000ユーロは、域外へ出る資金移動の縮小データセットと自己管理型アドレスの確認において依然として関係します。英国は2017年マネー・ローンダリング等規則の第7A部の下で最低額を設けていません。シンガポールの1,500シンガポールドルは、下限ではなくデータセットの区切りです。
各管轄区域で適用が始まったのはいつですか。
義務はFATFの勧告そのものではなく国内法から生じるため、施行日は大きく異なります。英国は2023年9月1日、EUの規則2023/1113号は2024年12月30日から適用され、オーストラリアでは新制度が2026年3月31日に始まり、新規登録対象の暗号資産サービスは2026年7月1日に繰り延べられました。
情報が欠けた送金は、どう扱いますか。
自動的に片付く例外ではなく、判断の対象になります。取れる対応は実行、拒否、返送、保留で、規則は選択が自社の文書化された方針に沿うことを求めます。ここは最も暗黙のままにされやすい工程であり、当局が最も確認しに来る段階です。
規則は自己管理型ウォレットにも適用されますか。
対象ですが、事業者間の送金とは扱いが異なり、適用される閾値を超える場合は、アドレスを支配する人物の確認まで含みます。双方に事業者が関与しない個人間の送金は、適用範囲の外です。
トラベルルールのブログ記事と何が違うのですか。
記事は、規則の内容、由来、EU規則の詳細な仕組みを説明します。このページは自社内のワークフロー、すなわち何が自動で走り、どこで人が判断するか、何を記録すべきかを扱います。

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